ナショナルジオグラフィック 2017年7月5日

<目撃>小象が溺れる!!母親ゾウが必死の救出
家族も大急ぎで駆け付けて協力、でも赤ちゃんは泳げた?
 
アジアゾウの赤ちゃんがプールに落ち、その母親らが大慌てで救出に駆け付ける―そんな出来事が韓国、ソウル大公園の動物園であった。
 
動物園が撮影した動画には、好奇心旺盛な1歳の赤ちゃんゾウが水際に近づき、うっかり水中に落ちてしまう様子が映っている。
 
しかし・・・赤ちゃんゾウは溺れていたわけではないようだ。ゾウの調査保護団体エレファントボイスの共同創立者で、ナショナルジオグラフィックが支援するエクスプローラーでもあるジョイス・プール氏は、「ゾウは泳ぐとき、鼻を水中から出して呼吸を続けます」と話す。
 
今回の動画でも、プール氏が言うように赤ちゃんゾウが鼻を上げて“シュノーケリング”をしているのがわかる―つまり、赤ちゃんゾウは、差し迫った危機の中にあったわけではないのだ。
 
では大人のゾウはなぜパニックに陥ったのだろうか。赤ちゃんゾウが泳げることを知っていたにもかかわらず、2頭のゾウは赤ちゃんが水に落ちたことで明らかに動揺している。それは彼らが耳をパタパタとせわしなく動かしていることからもよくわかる。画面の奥に見えるゾウでさえ、フェンスの向こう側にいるというのに、せかせかと行ったり来たりし始める。
 
「ゾウは大げさな行動をとる動物で、特にメスではその傾向が強くなります。何かしら劇的なことが家族に起こると、彼らは大いに興奮します」とプール氏は説明する。「これは互いの絆を深めるプロセスの一部なのです」
 
血縁でなくとも家族の絆は強い
 
家族の絆が極めて強く、共感能力が高いというゾウの性質は、今回の動画でも見てとれる。赤ちゃんゾウを助けに走る2頭のうち、親は13歳のメス1頭だけだ。体が比較的大きい方の36歳のメスは、彼らとは絆で結ばれた家族であり、母親と同じくらい赤ちゃんのことを心配している。
 
野生の環境であれば、年上のメスは赤ちゃんの祖母か叔母である可能性が高い。一方、飼育下の環境においては、血縁のない個体同士が一緒に暮らすことになるが、それでも彼らは互いに強い絆を結ぶ。
今回の動画に映っているメス2頭も非常に近しい関係にあり、協力して赤ちゃんを水中から助け出して安全な陸地まで送り届けている。
 
こうした動画を観る時には、ゾウが複雑かつ社会的な動物であり、野生では大きな家族を持つこと、捕獲された状態は彼らにとって楽なことばかりではないことを思い出して欲しいとプール氏はいう。「今回のような動画がネットで話題になると、なんてかわいいんだろうという声が聞かれますが、ああした動物はとても辛い生活を送っているものなのです」
 
文=Shaena Montanari/訳=北村京子

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